マツノヒデマサの温泉取材記
別所温泉 旅館花屋 全景
別所温泉 旅館花屋
(長野県上田市)
ホテル詳細

●温泉泉質 50℃の単純硫黄泉(源泉掛け流し)
●温泉効能 胃腸病・神経痛・筋肉痛・運動麻痺・リウマチ・外傷・打ち身・痔疾・冷え性・病後回復など

大正浪漫の世界へ―蔵と回廊の純日本建築の宿

 長野県上田市から別所温泉まで30分のローカル線上田交通が二両編成で走っている。上田市南西に広がる盆地は「塩田平」と呼ばれ、昔からお米の産地であり、「信州の鎌倉」と呼ばれるほどの文化財の宝庫である。八角三重塔を持つ安楽寺、多宝塔の常楽寺、夢殿観音の長福寺、未完の三重塔の前山寺など重要文化財や国宝が集まっている。
別所温泉 旅館花屋 回廊 その信州の鎌倉にふさわしい宿が別所温泉にある。2003年10月30日に訪れた日、庭で雑草取り作業をしていた年配のお二人に声をかける。「いやーもう1ヶ月になります。飽きてきましたわ。私らはシルバーから派遣されましたが、6,500坪の広大な敷地を持つこの宿には専属の庭師さんや大工さんがいますわ」との話には驚いた。
 玄関の右手に白い城郭風の建物がドーンと鎮座する。玄関に入ると白熱灯のシャンデリアが醸し出すロビーのしっとりとした雰囲気。後で監査役の飯島雅弘氏と支配人の横澤和明氏に聞くと、この母屋と城郭の食堂は大正6年(1917年)に建てられたものという。客室43室のうち離れが14室で、中庭を望みながら渡り廊下や外廊下で浴場や食事処をつないでいる。

別所温泉 旅館花屋 和風シャンデリア 質素な湯治場だった別所温泉に、ゆったりとくつろげる宿を造ろうと大正2年、地元の有志が共同出資して工事が始められた。当時寺社が多い別所温泉には腕に覚えのある宮大工が4年の歳月をかけて腕を競った。床柱に一刀彫のカタツムリの彫り物、富士山や千曲川を表現した欄間や障子、雪見障子にそうした個性的な匠の意気込みを感じさせる。傑作なのは越後(上山田)の遊郭から移築した21番の部屋で、極彩色の天井絵、和風シャンデリアなど。これらの優雅な客室を支えているのは、なんといっても中庭と離れを繋ぐ庭園の自然な佇まいと手入れである。正社員の修繕専門の庭師、大工、建具師たちの裏方さんの果たす役割は大きい。
別所温泉 旅館花屋 一刀彫りのカタツムリ 贅沢な造りの大宴会場で夕食をいただいた。神無月のお献立は、まず杏酒の食前酒に菊・蟹・林檎のきのこみぞれ和え、笹寿司、松茸・鱧の土瓶蒸し、松茸・赤鶏のきのこ鍋、お造り、信州そば、大岩魚朴葉焼き、朝鮮人参こがね揚げ、松茸茶碗蒸し。ご飯は塩田平こしひかり、デザートはメロンに巨峰。松茸尽くしに信州地の物をそろえた逸品の数々。つい、月を愛でながら食べたいと、更なる贅沢を望みたくなる。
 朝食は、山菜を煮た七九里煮、鮎の甘露煮、生麩ときのこの煮しめ、デザートには葡萄の生ゼリーとここでも地の物にこだわった哲学が感じられる。

別所温泉 旅館花屋 展望風呂 浴場は、大正6年当時のままの大理石大浴場は男女別にあるが、女性のほうが大きい。男性用は、浴室は2m×2mの湯船にかけ流しの天然温泉。更衣室との壁の孔雀模様のギヤマン風窓がゆったりとした優雅な時代を感じさせる。 展望風呂は男女別更衣室から湯船に入るとそこは混浴。早朝、女性の声が聞こえたが、混浴を承知のはずだからと、「はいります」と思い切って入ると、「うわっ」とかの声で一斉にざぶざぶーと4〜5人の高齢の女性が上がっていった。カランの湯が流しっぱなしの慌てぶりだが、予想をしていなかったということか。その後、別の女性2人が入ってきた。目をあわさずに無視しているのがエチケットか?
 浴槽は2m×6mの細長い滑りにくい伊豆石造り。湯口は2ヶ所で飲泉用のコップが置いてある。飲んでみると弱い硫黄泉の味がする。さらに露天風呂が男女別にあるが、22時から6時までは営業していない。東屋風傘屋根は周りの豊かな自然にマッチしている。明るいうちの入浴がお勧めだ。離れの部屋の一部にも天然温泉の浴室があるが、いずれも掛流しの湯で毎分900リットルという湧出量を誇る別所温泉ならではの贅沢な湯宿である。
(2003年10月)

 
別所温泉 旅館花屋
(長野県上田市)
ホテル詳細

アスパサービス 旅と温泉の相談室 
全国おすすめの温泉宿
 北海道東北関東甲信越東海 | 北陸近畿中国四国九州
療養・湯治の温泉宿秘湯・異色の温泉宿ペットと泊まる温泉宿スパ・レジャー施設のある温泉宿